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利用者の気持ちに沿った介護

ソフト面の心遣い

Eさんは若い頃から負けず嫌いで働き者でがんばってきた方です。Eさんは、失禁があるためにパンツ式のオムツを着用していました。ある日、Eさんがホールで他の利用者と楽しそうに話をしてくつろいでいた時に、オムツが汚れていることに介護者が気づき、「オムツは汚れていませんか」と声をかけました。するとEさんは「汚れてないよ」とそっけない返事です。もう一度、「オムツが汚れていないか、ちょっと見せてね」と声をかけましたが、「汚れてないよ」と怒ってしまいました。

<適切な言葉かけの例>

今日はたくさん汗をかいたから、あちらでそっと着替えませんか。さっぱりしますよ。(他の利用者がいることに配慮して、Eさんにだけ聞こえるように)

日頃は穏やかなEさんが、厳しい口調になり、怒ってしまったことには理由があります。オムツを着けることは、お年寄りにとってとてもつらいことで、できれば誰にも知られずに隠しておきたいと思うこともあるでしょう。恥ずかしさは、いくつになっても消えることはなく、そんな気持ちに配慮した声かけが求められます。介護者にとっては、「オムツ」は日常語になっていて、何気なく軽い気持ちで使っているのかもしれませんが、その「オムツ」という言葉がお年寄りを傷つけているのかもしれません。まして、他の利用者の前で「オムツが汚れている」などと聞こえるように言われてしまったら、Eさんの反応からみて、とても傷ついていると思われます。だからこそ、介護者の理解やちょっとした心遣い、配慮によって、お年寄りの羞恥心やプライドを守ることができます。このような話をすると、カーテンなどのハード面ばかりを考えがちですが、言葉かけなどのソフト面にも十分な心遣いをすることが大切です。お年寄りが、「何をしてほしいか」「何を望んでいるか」「今どんな気持ちなのか」をよく考え、お年寄りの立場にたって介護していくことが求められます。

個別に対応できるケア計画

Fさんは、週2回ほどデイサービスセンターに通ってきています。午後になり、入浴が始まりましたが、Fさんはなかなかお風呂に入ろうとしません。「お風呂に入りましょうね」と声をかけると、「よし入ろう」と返事はするのですが、全く動く気配がありません。他の利用者がお風呂場に移動しても、Fさんはなかなか動こうとしません。そのため「早く、早く」と声をかけて、手を取ってお風呂場まで連れて行くと、「せかされるなら、入るのをやめようかな」と言い出してしまいました。

<適切な言葉かけの例>

Fさん、お風呂の支度ができましたが、どうなさいますか。少し早いですが、お風呂に入ってゆっくりと温まりましょうね。さっぱりしますよ。

利用者には心身の状態に応じて、各自のリズムやペースがあります。お年寄りの場合、自分のリズムやペースでやろうとしていることも、うまくできなかったりすると、イライラしたり、不安になったりします。そんなときに、「早く、早く」とせかされてしまうと、一層不安になり、せっかくのやる気もがんばりも失せてしまいます。決められた時間に決められた行動をすることができるというのは、集団としての行動を優先してしまう介護者の間違った思い込みです。「どうなさいますか」という声かけは、利用者の意思を明確にするためにとても大切な声かけです。そして、実際に行動に移るまでの時間を待つことも大切です。利用者が自分で決断して、動き始めるように働きかけをしていき、更に動き始めるまでに時間のかかる方には、少し早めの声かけをするなどのケアが必要です。個別に対応できるように、きめの細かいケア計画が求められています。