
援助のきっかけのつかみ方
価値観を感じ取り判断する
Sさんは87歳の男性で一人暮らしをしています。軽い障害がありますが、日常生活に不自由するほどではありません。ホームヘルパーへの言葉遣いや対応などはきちんとしています。ホームヘルパーは週2回、掃除と食事の支度のために訪問しています。自分でできるという理由から洗濯はいままで一度も頼まれたことはありません。でも、押入れの中には汚れた服やシーツなどが入っているようで、気にしていました。ある日訪問すると、家の中に気になる臭いがたちこめています。Sさんは体調を崩して下痢をして、衣類やシーツを汚してしまったようです。でも、ホームヘルパーに洗濯を頼む気配がないので、「Sさん、洗濯はしなくていいですか。今日はとても臭いますよ。洗濯しますから汚れ物を出してください。」と言いました。
<適切な言葉かけの例>
ご自分で洗濯したいという気持ちはよくわかります。でも、たくさんの洗濯物ですから、私にもお手伝いをさせてくださいね。
ホームヘルパーにとっては気軽に頼んで欲しいと思うようなことでも、利用者にしてみれば、抵抗感や恥ずかしさを感じることもあると思います。下着の洗濯ぐらい自分でやるべきだと思っているかもしれませんし、下着をみられることを恥ずかしいと思っているのかもしれません。利用者の価値観を感じ取り判断してしくことが求められます。基本的に他人に任せたくないと思っていることに対しては立ち入らないことが礼儀です。ただ、衛生的に問題がある場合などは利用者と相談して、納得してもらうことが大切です。利用者が、ホームヘルパーに任せてみよう、言うことを聞いてみようと思ってくれ、そして、頼んでよかったと思ってもらえることがとても大切なのです。
表情の変化と心の状態をよく観察する
Tさんは30代半ばにリウマチにかかり、その痛みがTさんの心まで蝕んでしまいました。ある日突然寝付いてしまい、ベッドの上で天井の一点を見つめるだけの生活になってしまいました。そのうち食事も排泄も介助が必要になり、ホームヘルパーが訪問するようになりました。1年ほど経ったある日、軽いリハビリを介助していたとき、右手が口元まで届くことに気づきました。「今日は右手の動きがとてもいいですね。口に物を運べるほどによく動きますね」と言うと、Tさんは不思議そうな顔で自分の右手を見つめていました。
<適切な言葉かけの例>
こんなに動きがよければ、何か持つことができるかもしれませんよ。小さなおにぎりを作ってみます。自分で持って食べてみますか。もし、痛かったり、不安だったらすぐにやめていいですよ。でも、自分の手で食べるほうがきっとおいしいと思います。自信を持ってくださいね。
病気を長く患っていると、「私の痛みなど誰もわかってくれない」と周りの人達への拒否反応を示すこともあります。家族はそんなTさんに気を使って介護も消極的になりがちで、「痛がるから・・・」と尻込みしています。ホームヘルパーは訪問のたびに明るい会話を心がけ、利用者の気分のいい日には、「こうするとより快適ですよ」と話しかけ、ひとつひとつの変化についてじっくり時間をかけてその時がくるのを待ちました。