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利用者の自立意欲を引き出す介護

同じ感動を共有・体験する

Gさんは85歳の女性です。3年前に転倒して以来、歩行困難になってしまいましたが、伝い歩きではありますが、自分の身の回りのことは自力でやっています。食べたいものも自分で調理します。外出は病院のみで、普段は自宅でガーデニングを楽しんでいます。ある日、ヘルパーさんが、「車椅子で一緒に買い物に行きましょう」と声をかけたのですが、「ヘルパーさんだけで行ってきて」という返事が返ってきました。更に「食べたいものを自分で見て買ったほうがおいしくできませんか」と声をかけましたが、「面倒くさい」と言って断られてしまいました。

<適切な言葉かけの例>

今日はいい天気ですね。公園では梅の花が咲きましたよ。お買い物がてら、散歩でもしませんか。気分転換になりますよ。

一人暮らしは変化のない毎日ですが、誰にも遠慮せず、自分だけのリズムで過ごせますので、慣れてしまえば、これほど気楽なことはありません。でも、そういう生活が心身の健康にとってプラスであるとは限らないので、ホームヘルパーはお年寄りの日常生活を支えると共に、楽しく過ごしていただけるように考えながら援助していかなければなりません。外出というと身なりも気になりますし、着替え自体が憂鬱になります。なので、ただ家のなかにいることがマイナスという考え方で外出を強要するのではなく、利用者の気持ちに対する気配りが大切です。外出することは、リハビリ効果があるとはいっても、やはり楽しく快適な暮らしの変化でなければなりません。日頃から、外の情報、季節の変化(梅の花が咲いたなど)、近所の催し物などの情報を伝えておくことも必要でしょう。外出する時には、リハビリのために連れ出してあげるのではなく、普通に友達を誘うように声をかけてみてください。同じ感動を共有・体験することが共に寄り添う近道になると思います。

心を受け止める

Hさんは、左半身に麻痺があり、普段は車椅子で生活している女性です。夕食の時、みんなでテーブルにつきましたが、Hさんは料理に少ししか箸をつけません。心配になって「食欲がないのですか。どうしましたか。」と声をかけてみました。すると、「今日は手の動きが悪くて食べにくいのだけれども、以前に手が動かないと言ったら、『いつも自分で食べているのでしょう。がんばって』と言われてしまったから、だから・・・もういいんです。」と沈んだ表情をしています。介護者に確認してみると、日中は何となく元気がなかったけれど、そんなことはしょっちゅうあるから気にもとめていなかった、とのことです。Hさんは早々に部屋に帰ってしまいました。

<適切な言葉かけの例>

手に力がはいらないのですね。疲れたときは、箸が重く感じることもありますよね。良かったら私がお手伝いしましょうか。

たとえ障害や病気があっても、自分でできることを自分の手でやることは、ある意味喜びであり、誇りでもあります。なので、そのために、生活自体をリハビリととらえ、「甘えない」「がんばる」ことを要求しがちです。何かを要求してきたときに、それを「甘え」「わがまま」ととらえてしまえば、利用者の心に触れる機会を失ってしまいます。「食べたくない」という訴えは、日頃から健康状態に注意していて問題ないと判断したのならば、心理的な事が原因ではないでしょうか。どうして「食べたくない」と訴えるのか立ち止まって考えてみる必要があります。施設での暮らしで他の利用者が身近にいるからといって、気軽に何でも話し合える関係にあるとは限りません。人間関係がうまくいってないのかもしれません。孤立感が漂い、介護者に支えを求めているのかもしれません。また、からだが動きにくいことに対する不安や葛藤について悩んでいるのかもしれません。介護者は、「動かない手」を問題にするよりも、「心」を受けとめていくことが大切なのではないでしょうか。