トップページ>悲観的な利用者

悲観的な利用者への介護

話をじっくりと聞く

Iさんは夫に先立たれ、二人の娘は嫁ぎ、一人で暮らしています。二人の娘は時々顔をだしてIさんを元気づけているようです。ホームヘルパーが、家事援助と話し相手のために、定期的に訪問しています。 ある日、いつものように家事が片付き話し込んでいると、Iさんの苦労話になり、つらかったことなどを話してくれました。そして、Iさんは「私もこの頃体調が悪くて、もうあまり長生きできないと思う。苦労して娘を育てたのに、その娘にはきついことを言われるし、いいことは何にもないよ・・・」と涙ぐみました。「そんな弱気になっちゃだめだよ。娘さんも時々来てくれるし、かわいい孫もいるのだから」と慰めましたが、Iさんは黙ってしまいました。

<適切な言葉かけの例>

からだの事や娘さんとの事を考えると、つらい気持ちになるのですね。そんなときは私でよかったらたくさん愚痴をこぼしてくださいね。聞くことしかできないけど、少しは気が晴れるかもしれないですよ。

日頃の介護関係のなかで、利用者と介護者の間で親しい感情が生まれ、ついつい本音で愚痴をこぼしてしまうこともあるのではないでしょうか。利用者との信頼関係は、家事などの物理的なものだけでなく、心理的なものも含まれます。今回のIさんの場合、Iさんは具体的なアドバイスが欲しいのではなく、自分の気持ちを聞いてほしいと思っているのです。
一人暮らしをしている高齢者の中には、私たちが思っている以上に、孤独や不安を感じている人がいます。近所の人達と行き来ができるくらい元気なうちはいいのですが、体力が落ちてきたり、病気がちになると、急に近所付き合いが減り、話し相手も限られてきて、本当の気持ちを打ち解けて話す機会がないものです。Iさんもからだが弱ってきたことに対する不安があったり、娘との関係がうまくいってないことに寂しさを感じています。このような感情を抱いているときには、誰かに話を聞いてもらうことで心が軽くなります。助言をするのではなく、話をじっくり聞いてあげ、相手の言葉や気持ちに対して共感を示すことが何よりも大切です。

気持ちを受容する

Jさんは、夜になると悲観的な気分になってしまいます。排泄を訴えて、10分~20分ごとにナースコールが鳴ります。最初は介助に応じていましたが、回が重なるので、「さっき座ったばかりですよ。2時間ごとに声をかけに来ますから、その間ゆっくり眠ってください。夜はゆっくり眠らなければ明日がきついですよ」と声をかけると、「布団を汚したらいけないと思って不安で・・・」という返事が返ってきました。また数分後にコールがあり、「眠れないのですね。どうしたのですか。」と背中をさすりながら尋ねると、「自分はだめな人間かもしれないと思ったら哀しくなってしまって」と話しはじめました。

<適切な言葉かけの例>

眠れないほどに不安なんですね。気持ちが落ち着くまで、私が側にいましょうね。

夜、利用者は昼間とは違った一面をみせます。静かな部屋の天井を見つめながら、これから先への不安や、離れて暮らしている家族への思いで胸が苦しくなり、哀しい気持ちでいっぱいになるのですが、それが夜になると更に増してくるのです。そのような気持ちを素直に表現できればいいのですが、「迷惑をかけてはいけない」とか「わかってもらえるだろうか」などの気持ちが邪魔をして違う形で訴えてきているのです。ナースコールには、Jさんの不安な気持ちが込められているのです。このような場合、無理に慰めるのではなく、背中をさすったり、手を握ったりして、うなずきながら話を聞いてあげるだけでも心を開いて話し始めるかもしれません。話を聞いていくうちにJさんは落ち着いた表情で眠りにつくでしょう。利用者の気持ちを受容してあげることが大切です。